(102) 思いがけない出会いにビックリ
長野・常楽寺の愛染桂

長野県で同窓会があり、その際上田市別所温泉の常楽寺を訪ねたら、そこに本物の「愛染桂」がありました。映画「愛染かつら」にちなむ「愛染桂(あいぜんかつら)」の木があることは聞いていましたが、映画の主題歌「旅の夜風」の歌詞に鴨川とか比叡山とか京都の地名が出ていましたから、愛染桂は何となく京都にあると思っていたので、長野県上田市にあるとは知らず驚きでした。

    

 (102-1) 常楽寺と愛染桂

 長野県上田市の常楽寺は北方にある善光寺と相対するため、全国的にも珍しく本殿が北向きに作られており、そのため北向き観音寺とも呼ばれるユニークなお寺です。このお寺に「愛染桂」と称する桂の巨樹があり、しかも本物の愛染桂であったことは驚きでした。

 昭和の初めの頃の小説家:川口松太郎さんが、さるお寺の中にある愛染明王堂とその傍に立つカツラ(桂)の大木からヒントを得て、小説「愛染かつら」を発表し好評を博し、それが戦前・戦後に映画「愛染かつら」として映画化され、映画の主題歌「旅の夜風」ともども大ヒットして一世を風靡したことは、ある年齢以上の方であれば記憶に残っているでしょう。

 小説「愛染かつら」のもとになったカツラの巨木は、この上田市の常楽寺のカツラだったのです。小説や映画が大ヒットした後、このカツラは「愛染桂」と呼ばれるようになりました。


  

 (102-2) 巨木としても素晴らしい「愛染桂」

 常楽寺のカツラは幹周5.5m、樹高22m、伝承樹齢1200年の堂々たるカツラ巨樹です。各地のカツラ巨木の多くが、小さい木が寄り集まった株立ちであるのに対し、このカツラは単幹で実に堂々としています。カツラ巨木としても第一級のものです。
 
 昭和13年(1938年)に封切られた映画「愛染かつら」は上原 謙演じる医師と、田中絹代演じる看護婦さんの恋愛ドラマですが、 映画の中で上原 謙が「このカツラの木に触れながら愛を誓うと、二人は必ず結ばれる」と言っています。

 映画は大ヒットし、その後昭和23年に第2作、昭和29年に第3作、昭和37年(1962年)に第4作が発表されるなど、1本のカツラの木が生み出した恋愛ドラマは映画の黄金期を飾ってきました。

  

 (102-3) 「アイゼンカツラ」の花?

 愛染桂のことを調べようとネットを検索したら、なぜかノウゼンカズラ(凌霄花)の花が出てきました。明らかな誤りであり調べてみると、大阪・天王寺に愛染堂とカツラの木があり、それも愛染桂とよばれているようです。その愛染桂にはノウゼンカズラが巻き付いており、夏になると左写真のようなオレンジ色の花を咲かせますが、この花を愛染桂の花と誤解した人がブログ等で紹介しているようです。
 しかしよく考えてみると、愛染桂はしょせん小説の世界での樹木ですから、それに巻き付いたノウゼンカズラの花を愛染桂の花と呼んだとしても、目くじらを立てるようなことではないでしょう。いつの日か、アイゼンカツラがノウゼンカズラの別名になるのかもしれません。。
(左写真は本HP掲載「(70)真夏に花咲くノウゼンカズラ」より)

  

 (102-4) 「夫婦杉」もあります

 愛染桂は縁結びの霊木として、若い人たちに親しまれ、今でもご利益を求めて多くの若者が参拝しているようですが、既婚の中高年には時すでに遅しの感があります。しかし境内には夫婦杉と称する杉の大木もあり、既婚者には夫婦円満のご利益が用意されているようです。

  

   樹木写真の属性
 樹  種 カツラ(桂) [カツラ科カツラ属
スギ(杉) [ヒノキ科スギ属

(「樹木の見所」のページにリンクしています)
 樹木の所在地  長野県上田市別所温泉1666番地  
 撮影年月  2017年6月
 投稿者  上滝 吉洋    
 投稿者住所  横浜市都筑区中川中央
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