(126-1)　ポトマック河畔の桜

　アメリカの紀行作家で明治時代に日本にも何回か訪れたエリザ・R・シドモアさんは日本の桜に魅了され、桜をワシントン市に植樹することを提案しました。この提案に時の大統領夫人や、日本人で当時アメリカで活躍していた高峰譲吉氏などが賛同し、多くの人の努力により、東京市からワシントン市に桜が贈られることになりました。

　1912年（明治45年／大正元年）に横浜港から3000本の桜の苗木が送りだされ、3月27日にワシントン市で植樹式が開かれ、今日のポトマック河畔の桜並木が誕生しました（左写真）。　ポトマック河畔の桜はアメリカ第一の桜名所として、毎年全米桜祭りが盛大に開催されています。
（左写真は「地球の歩き方ニュース&レポート」HPより）

 (126-3)　シドモア桜の存続普及活動

　横浜・外国人墓地は一般に開放されていないため、シドモア桜を目にする人も少なく、その存在を知る人もほとんどいない状況でした。また1991年に送られてきた5本の桜の内、何本かは枯れてしまう事態もあり、横浜市はシドモア桜から接ぎ木手法で苗木を作り、シドモア桜の存続普及を進める活動を2001年から開始しました。

　シドモア桜普及活動のなかで初期に植えられたものを横浜・元町商店街の近くに見ることができます（左写真上側）。この場所は元町商店街に通じる谷戸橋のたもとの狭いスペースであり、上空には高速道路の高架橋も通る、かなり厳しい環境にもかかわらず、シドモア桜は良く育ち、幹周り116cmの立派な木に成長しています。2019年4月に訪ねた時、あふれるばかりに美しい花を咲かせ、道行く人々も桜の花に気付き、傍に設置されているシドモア桜の説明掲示板（左写真下側）に見入っていました。

　シドモア桜の苗木は、1991年に届いたシドモア桜からの接ぎ木方式で作られるため、一度に大量の苗木を作ることは困難です。毎年少しずつ増やす以外に方法がありませんが、それでもすでに横浜市内で5ケ所余り、長野県、富山県など県外にも植樹の輪が広がっています。