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 (144) 新しい樹木景観をもたらした
県境のメタセコイア並木

島根県と広島県を結ぶ国道261号線の県境に,、ちょっと長いトンネルがあり、そのトンネルを島根県側から広島県側に抜けたところにメタセコイア並木がありました。メタセコイアはこの地域では珍しい落葉針葉樹として、新しい樹木景観を生み出すとともに、道行く人々に四季の変化を伝え憩いの場所を提供していました。

  

  (144-1) 春のメタセコイア並木
春になるとメタセコイアは円錐形の樹冠に薄緑色の新葉が芽吹きます。この地域には落葉針葉樹は他にないので、針葉樹特有の円錐形の端正な樹形が、薄緑色に浮かび上がるさまは非常に印象的です。トンネルを抜け薄っすらと緑に染まるメトセコイアが目に入ると、春のおとずれを感じるとともに、別世界に来たような感動を覚えました。
 
メタセコイアは日本の植物学者が化石で発見し、絶滅したものと思われていましたが、1946年に中国奥地で生木が発見され、生きている化石と呼ばれる樹木です。日本には1949年にもたらされ、曙杉と呼ばれて各地に植栽され、落葉針葉樹として日本に新しい樹木景観をもたらしました。

 

  (144-2) 夏のメタセコイア並木
夏になるとメタセコイア並木に緑濃い葉が茂り、ここを通りかかった時に車を止めてしばし緑陰を楽しむのも、この道を通る楽しみでした。
 
メタセコイアは針葉樹の仲間でありながら、その葉は鳥の羽のような形をして柔らかくエレガントです。細長い枝いっぱいに葉を付けたメタセコイアの枝が、そよ風に揺れる木陰はこの上なく心なごむ緑陰です。

 


 (144-3) 秋のメタセコイア並木 

 メタセコイアの秋は2段構えで進行します、9月、秋風が吹き始めるとメタセコイアの葉は黄色味を帯び始めますが、黄緑の状態は長く続きます。左上写真の右端の赤い樹木はヤマモミッジの紅葉ですが、他の樹木がすっかり紅葉する頃にも、まだメタセコイアの葉は黄緑を保っています。
 そしてメタセコイアは他の樹木がすっかり散ってしまう初冬の頃、左下写真のように黄褐色に染まり秋の終わりを告げます。

  

   (144-4) 冬のメタセコイア並木
 メタセコイアの葉がすっかり散ってしまうの待っていたかのように、県境に雪が降ります。メタセコイアは、冬の木枯らしの中にも身をかがめることもなく、円錐形の樹冠で降りしきる雪を切り裂くかのように真っすぐに空に向かって立つ姿は、美しさを通り越して神々しさが感じられます。
 
県境のトンネルができる前には峠道に降る雪のため、冬にはしばしば交通が止まる難所でした。トンネル開通(1993年)に伴い新しい道路が作られたときにメタセコイア並木も植えられたものと思われます。
そのようなメタセコイア並木ですが2020年春頃に一部を残し伐採され今ではもう見ることができません。樹齢30年余の立派な木に育ち、その魅力を遺憾なく発揮していたメタセコイア並木だっただけに残念です。 

   

   樹木写真の属性
 樹  種 メタセコイア(ー) [ヒノキ科スギ属]
(「樹木の見所」のページにリンクしています)
 樹木の所在地  広島県北広島町中三坂  
 撮影年月  ①2013年4月、②2017年7月
 ③a2017年10月、b2015年11月
 ④2016年1月
 投稿者   木村 樹太郎   
 投稿者住所  島根県邑智郡川本町
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