(75) 戦後開拓団の苦労を語り伝える
長野・大峰高原の七色大カエデ

信州大峰高原に推定樹齢250年になるカエデの独立大木があります。このカエデは樹高13m、幹周3.2m余あり、カエデ類としては珍しい巨木であるだけでなく、70年前の戦後開拓団の苦労を今日に伝える貴重な史跡樹木でもあります。

  

  (75-1) カエデ独立大木
 
 そのカエデは海抜1000mの大峰高原の入り口に立っています。緩やかな南斜面で、カエデの周りには他の木がなく、雄大に枝葉を伸ばした独立木です。テレビコマーシャルの「この木何の木、気になる木」を連想させられる美しい姿の樹です。

70年前の開拓の時、主幹が切り倒されてしまったのですが、その後の萌芽更新により、今日のような見事なカエデ大木に蘇り、秋になると美しく紅葉して人々を魅了しています。
遠く信州の山並みを背景に、赤く紅葉して立つカエデ独立大木の姿は感動的です。

  

(75-2) 七色の紅葉

 このカエデは10月上旬頃から色付きはじめ、赤、黄、緑の様々な色のグラディエーションが美しく、見る位置、見る時間によっても色合いが変わり、七色大カエデと呼ばれるようになりました。最後は木全体が赤く染まります。

 カエデはカエデ科カエデ属の樹木の総称ですが、このカエデは葉の特徴からオオモミジと思われます。
  

    

(75-3) 萌芽更新の跡

 七色大カエデの幹は高さ1m位のところから幾本もの枝に分かれ、70年前の萌芽更新の跡がはっきりと残っています。

 昭和22年ころ行われた大峰高原開拓により、付近一帯の樹木が伐採され、根株も撤去されました。このカエデも地上1m位のところから伐採されましたが、余りに大きく完全に撤去することができず、根株は残されました。

 開拓地はその後牧場になりましたが、残されたカエデの株からは新しい芽が出て萌芽更新し、今日の姿になったのです。

  

  

  (75-4) 感動をいつまでも
 
  上写真は別の角度から見た七色大カエデです。はるか遠くに北アルプスの山々を望み、カエデの雄大さが一層引き立ちます。
一般にブナ科やカエデ科の樹木は萌芽更新で樹木が若返り活力が高まるといわれていますが、70年前の伐採とその後の萌芽更新は、この七色大カエデにとっては不幸中の幸いだったのかもしれません。
今後いつまでも素晴らしい紅葉を見せ、私たちに感動を与え続けてほしいものです。

  

   樹木写真の属性
 樹  種  オオモミジ [カエデ科カエデ属

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 樹木の所在地  長野県北安曇群池田町 大峰高原   
 撮影年月   2015年10月
 投稿者  天野 彰 
 投稿者住所  長野県安曇野市明科光
 その他