(81) 街道筋の旅籠屋とともに生きる
Z字形の松巨木

浜田市金城町の旅館の玄関先に面白い形をした黒松があります。常識では考えられないような樹形をしておりながら樹齢が300年を超え、巨木に域に達しているこの松は、樹木の生きる力についていろいろ考えさせられる樹木です。

  

  (77-1) 旅館の玄関先に立つZ字形の松
 
旅館の玄関先に立つこの松の大木を目にしたとき、最初何か不自然な感じを受けましたが、松の木をよく見て唖然とさせられました。通常の樹木の常識では考えられない、太い幹がZ字型に曲がっているではありませんか。
家の壁すれすれに立つ幹が地上4m位のところから直角に曲がり、水平に2m位伸び、また直角に曲がって垂直に立ち上がり、家の軒先を巧みにかわしています。マジックを見ているようです。
旅館の前には石州浜田と芸州を結ぶ街道が通り、この松は江戸時代に街道の目印として植えられたものだそうです。かってこの場所に旅籠屋があり、今の旅館に引き継がれてきたのでしょう。

  

(81-2) 巨木としても立派な松

 この松は幹がZ字形に曲がっているというだけでなく、幹周 3.35m、樹高19.5m、推定樹齢300年の堂々とした黒松の巨木です。
 幹の根元の太さと、途中の太さがあまり変わらないことから見て、この松がまだ若かった頃、おそらく人手が加わって今のような姿になったのでしょう。
 Z字形にまがりながらこれほどの巨体を支え、数百年の風雪に耐えてきたことは、信じがたい生命力です。足元も家の基礎やコンクリートで固められ、樹木にとって良い環境とは言えません。

  

    

(81-3) 勢いよく繁る松の枝葉

 見上げると枝が力強く伸び、活力のみなぎる青々とした松の葉が繁っています。
 近年、松くい虫の被害で多くの松の大木が枯れて失われていますが、この松は非常に特異な樹形と厳しい環境にありながら、どうしてこれほど元気でいられるのか? 
 その裏には旅館の方や地域の人々の樹木を守り育てる長年の努力があるのでしょう。また私達人間の常識では計り知れない秘めた力を、樹木は持っているのかもしれません。樹木についていろいろ考えさせられる松巨木です。

  

  

   樹木写真の属性
 樹  種  クロマツ(黒松) [マツ科マツ属]

(「樹木の見所」のページにリンクしています)
 樹木の所在地  島根県浜田市金城町今福111   
 撮影年月   2016年 3月
 投稿者 (1)山崎 知行
(2)木村 樹太郎  
 投稿者住所  (1)島根県浜田市金城町
 (2)島根県邑智郡川本町
 その他