(85)神秘ただよう
大瀬崎のビャクシン樹林

伊豆半島の北西の付け根に駿河湾に突き出た小さい半島の大瀬崎が有り、その先端に「神池」と呼ばれる不思議な池があります。そしてその池の周辺に130本以上の大小様々なビャクシン(柏槇)が群生し、神秘的な雰囲気を醸し出しています。

  

 (85-1) 大瀬崎の神池とビャクシンの御神木

 大瀬崎の半島の中ほどに大瀬神社(正式には引手力命神社)があり、半島の先端に直径100m位の池が有ります。周囲を海に囲まれ、川も無いのに池には真水が湧きだし、伊豆七不思議の一つに数えられ、この池は「神池」と呼ばれています。
 神池の周りには130余本のビャクシンが繁茂し、大瀬神社の御神木とされています。

  

 (85-2) ビャクシンの樹林

 複雑に曲がりくねった幹や枝、勢いよく枝葉を茂らせたものから、ほとんど枯れ木かと思うようなものなど、大小様々なビャクシンが林立し、他の樹木が見せる樹林の雰囲気とは大きく異なり、神秘的な雰囲気を漂わせています。

 厳しい環境のため、他の樹木が生育できず生命力の強いビャクシンだけが生き残り、ビャクシンの林が出来たのでしょう。

 大瀬崎に育つ130本余のビャクシンの林は、その規模の大きさと北限のビャクシン樹林として、国の天然記念物に指定されています。

 

 (85-3) 枯れているかのようなビャクシン古木
 
上写真の様な海に身を乗り出して立つビャクシンには、容赦なく潮風が吹き付け、嵐の時には海水のシブキも浴びるでしょう。樹皮はすっかり剥げ落ちてほとんど枯れている様に見えますが、先端の方には緑の葉が残っています。そして良く見るとビャクシン独特の青白い小さい球形の実もなっています。極限の状態で必死に生きている強靭な生命力には驚かされます。

  

 (83-4) 荒々しい姿で立つビャクシン巨木

 左写真の樹は大瀬崎のビャクシン樹林の中で最大のものです。幹周7.6m、推定樹齢300年以上(伝承樹齢1500年)の圧倒されるような巨樹です。

 自然生のビャクシンは海岸の岩場などの厳しい環境に多く見られますが、厳しい環境に耐えてゆっくりと育つビャクシンの姿が、禅の教えに通ずるところが有るとして、禅宗の寺院にビャクシンんが多く植えられていると聞きます。厳しい環境の中で荒々しい姿で立つ大瀬崎のビャクシン群を見ると、さもありなんと思わされます。

     

   樹木写真の属性
 樹  種   ビャクシン(柏槇) [ヒノキ科ビャクシン属]
  別名:イブキ(伊吹)
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 樹木の所在地 静岡県沼津市西浦江梨  
 撮影年月  2016年5月
 投稿者  大熊 敏治
 投稿者住所  横浜市栄区犬山町
 その他